はいはい、面白いニュースを見かけたので、ちょっと記事を書いてみようかなと思いやす。
これ、先月末にLiga F、つまりスペイン女子サッカーのトップリーグが出した記事なんですけど、結構面白かったので紹介です。
※この記事内の日本円換算は、2026年7月9日のECB参考レート(1ユーロ=185.72円)を基準にした概算です。
100億円の投資、その裏側
めっちゃ簡単に言えば、
Liga F「エグい🫨 5,500万ユーロ、日本円でざっくり102億円が投資されるで!2026-27シーズンから4シーズンに分けて投入されますわ!クラブ強化、選手価値向上、国際展開に使うで😁」
というリリースです。
Liga Fのクラブ総会では、この契約が3分の2以上の特別多数で承認されたとのこと。Liga F側は、これを欧州の女子競技で過去最大の民間資本投資と説明しています。
これだけ見ると「へ〜、すげ〜」となるじゃないですか。
ただ、これに対して面白い反応を示したのが、Liga F所属クラブの一つ、レアル・マドリードです。
レアル・マドリード公式:Official Announcement: Liga F
レアル「なんか言うとりますけど、リーグ参加クラブの4分の1は、この投資契約に参加せんと決めとるで?(^_^;)」
レアル「だってこれ、資金提供を受ける代わりに、2051年6月までの25年間、Liga Fの将来の商業収入の35〜49%を投資家側に渡す仕組みですやん(^_^;)」
レアル「参加するクラブの判断は尊重するけど、任意参加なんやから、不参加を選んだクラブが経済面や制度面で不利になるのはやめてーなw」
レアル「てか、今後Liga Fに昇格してくるクラブまで、自分たちは最初のお金を受け取っていないのに、この25年のモデルに縛られるん、おかしくないっすか?w」
レアル「ワイちゃんたちは、公平で持続可能かつ透明性のある形で、女子サッカーの成長に取り組んでいきますわ」
ちゅうことですわな。
これは大正義w
少なくともLiga F側の公式リリースには、「将来の商業収入の35〜49%」「2051年までの25年間」という条件は書かれていません。
そこをレアル・マドリードが公式声明で具体的に出してきたことで、約102億円を受け取る代わりに、将来の商業収入の一部を25年間渡すモデルだと分かったわけですね。
エグい……。
まあでも、一概に悪い契約とも言い切れません。
レアルの声明によれば、投資総額5,500万ユーロのうち、参加クラブ全体に4,000万ユーロ(約74.3億円)、Liga F本体に1,200万ユーロ(約22.3億円)、一部選手の肖像権取得に300万ユーロ(約5.6億円)が充てられます。
リーグ参加クラブの4分の1、つまり16クラブ中4クラブが不参加で、残る12クラブが契約に参加すると仮定し、さらに4,000万ユーロを均等配分すると仮定すれば、1クラブが受け取るのは総額約333万ユーロ、日本円で約6.2億円。
それを4シーズンに分けるので、1クラブあたり毎年約83万ユーロ、日本円で約1.55億円が入る計算です。
ただし、これはあくまで「12クラブで均等配分した場合」の試算。実際のクラブ別配分方法は、今回確認できた公式発表では公表されていません。
具体的なクラブ別の使途もまだ見えませんが、営業、広報、デジタル、運営人材、競技環境など、クラブの体制を整えるための原資にはできますわな。
ちなみに、この投資を主導するのは、パウ・ガソルの事業・投資活動を束ねるGasol16 Venturesと、スポーツ特化の「マーチャントバンク」を名乗るFortified Partnersです。
大事なのは、Gasol16 VenturesとFortified Partnersの2社だけが、自前で102億円を全部ポンと出すと公表されているわけではないこと。公式発表の表現は、両社が投資を「主導する」というものです。
男子のラ・リーガにも似た前例がある
こういう「今まとまった資金を入れる代わりに、将来の収益の一部を長期間受け取る」というモデルは、Liga Fが初めてではありません。
男子のスペイン1部・2部を運営するラ・リーガ(LALIGA)も、2021年にCVCとの間で「LALIGA Impulso(ラ・リーガ・インプルソ)」という似た枠組みを始めています。
ラ・リーガ公式:LaLiga and CVC sign agreement to set project Boost LaLiga in motion
ただし、Liga Fの今回の契約と、ラ・リーガのCVC契約は法的な構造までまったく同じではありません。あくまで「将来収益と引き換えに、今まとまった成長資金を得る」という大枠が似ている、くらいの理解が安全です。
ラ・リーガの契約は、2021年12月の総会で42クラブ中37クラブが賛成。レアル・マドリード、FCバルセロナ、アスレティック・クルブは反対の立場を取りました。
CVC側の投資総額は19億9,400万ユーロ。現在のレート感で日本円にすると、約3,703億円です。
そのうち、参加クラブへの融資枠は最大18億9,942万ユーロ、日本円で約3,528億円。
3,500億円!?
エグいエグいエグい🤣🤣🤣🤣🤣
いやエグいて〜〜🤣🤣🤣🤣🤣wwwwwwww
この契約では、CVCがラ・リーガの放映権事業から生まれる「純分配可能収入」の一定割合を50年間受け取ります。
さらに、参加クラブが受け取る資金は、会計上は50年かけて返済する参加型ローンとして組まれています。
50年て。
エグいことを考えますな。
ラ・リーガ公式によれば、クラブが受け取る資金の少なくとも70%は、インフラ、デジタル、テクノロジー、商業、国際展開、ブランド、人員体制などの成長投資に使う設計です。
実際に、スタジアムの改修や練習場の拡張、デジタル化などが進められているとのこと。
こうして比べると、今回のLiga Fの約102億円がちょっと安く感じますわね。
女子サッカーにとって、年1.5億円はデカいのか
ただ、女子サッカーの規模で考えると、それでもかなりデカい。
Liga Fは、2024-25年度にクラブへ合計1,700万ユーロを分配したと発表しています。
16クラブで単純平均すると、1クラブあたり約106万ユーロ。さっきの仮定で出した年間約83万ユーロは、現在のリーグ分配額の単純平均に対して、約8割分が上乗せされる規模です。
もちろん、実際の分配額も今回の投資金の配分も均等ではない可能性が高いので、あくまで規模感を見るための比較です。
それでも、今すぐ人材や仕組みに投資したい中小クラブからすれば、参加したくなる気持ちも分かりますわな。
一方で、レアル・マドリードのように、自力でスポンサーや商業収入を伸ばせる大クラブからすれば、
「この金額のために、25年間も将来の収入を渡すんすか?」
となるのも分かる。
クラブの規模や立場によって、この契約の見え方が全然違うわけです。
ふーん。
じゃあ、なぜこのニュースが面白かったのか
ということでですね。
なんでこの記事を面白いな〜と思ったかというと、このお金を出す側の気持ちになって考えてみると、約102億円を先に入れて、25年間にわたって将来の商業収入から回収していくモデルを選んだということは、要するに、今後女子サッカーが成長して、商業収入が増えないと投資家側のうまみも大きくならないわけですな。
今回の約102億円は、さっきの男子ラ・リーガと比べると小さく見えましたが、Liga F自身が過去最大級と打ち出すほど、女子サッカー界隈ではビッグな話。
Gasol16 Venturesは、CVCのように何十年も巨大ファンドを運用してきた会社ではありません。
同社の公式サイトには、Oura、Overtime、WNBAなどへの投資・助言実績が掲載されていますが、Liga Fのような大型リーグ案件を運用し、回収まで成功させた実績は、公開情報ではまだ確認できません。
それでも、女子サッカーに約102億円を投じる案件を組み、主導しようと思う人たちが現れたっちゅうことですわな。
世界的に女子サッカーの人気が伸びているという話は、日本で女子サッカーをノコノコ追っかけている私の耳にも入っていました。
Liga F自身も、2025-26シーズンの累計視聴者数が750万人に達し、前季比11.2%増えたと発表しています。UEFA女子チャンピオンズリーグも、2025-26シーズンの視聴者数が前季から倍以上に伸びたとのこと。アメリカのNWSLも観客動員を伸ばしています。
そういうニュースは以前から見ていたのですが、今回ばっかりは「うおっ」と驚いたので、この記事をピックしてみました。
私が想像していた女子サッカーの未来
ただ私自身、正直なところ、女子サッカーの将来性を100%信じ切れている派閥ではありません。
もちろんWEリーグをめっちゃ追っかけていて、私は好きなんですけど、これが今後すぐに日本全国でバリバリ知名度を上げて、巨大な人気コンテンツになるかというと、まあ難しそうだなと思っています。
この競技がもっと発展して、日本全国で知名度を上げていくためには、本当に小さな努力を積み重ねていかなきゃならない。
「理念先行リーグ」だとバカにされつつも、プロとしての体裁を整えたリーグで踏ん張りながら、少しずつ競技レベルや興行の質を上げていく。
WEリーグっちゅうものは、数年どころか数十年単位でこらえ続けないといけないのかもしれない。
その間にも、優秀な選手たちはジャンジャン海外へ移籍していく。
国内リーグはステップアップリーグとして苦虫をかじりながら、それでも「職業・プロサッカー選手」という道を女子サッカープレーヤーたちの前に残し続けなきゃならない。
行く先には、サッカーで飯を食える世界があるんじゃいと、大人たちが血の涙を流しながら、その扉を開け続ける。
そうして、そうしてようやく、進学や就職のタイミングで競技を続ける道を見つけられなかった女子選手たちにとって、プロサッカー選手が将来の選択肢の一つになっていく。
その積み重ねがグラスルーツの発展につながり、日本女子サッカー全体の競技レベルも上がっていく。
私がぼんやり想像していた女子サッカーの未来は、だいたいそんな感じでした。
明るく輝かしい未来というより、将来の競技レベル向上のために、大人たちが必死に支え続けて、ようやく成り立つもの。
女子サッカーというのは、そういうものなんじゃないかなと思っていたんですね。
それでも「未来に賭ける人」が現れた
もちろん、日本とスペインでは女子サッカーを取り巻く状況も全然違います。
スペインにはFCバルセロナ女子という世界的な強豪がいて、代表も国際大会で結果を残してきました。なので、このLiga Fの話をそのままWEリーグに重ねることはできません。
それでも、私がなかなか苦しいものとして想像していた女子サッカーの未来に対して、
「いや、これから商業的に伸びますやろ」
「100億円を投じても、25年間でそれ以上の価値を生む市場になりますやろ」
と考える人たちが現れたことには、ちょっとした嬉しさがありました。
もちろん実際には、
「女子サッカーの未来を信じています!」
みたいな美しい話ではなく、
「今のうちに権利を押さえておけば儲かりますわ^^!」
と思っただけかもしれない。
むしろ投資家なんだから、そう思っていないと困りますわな。
契約条件はかなり重いし、本当にLiga Fのためになるのかは分かりません。
25年後に「あのとき将来の収益を安く売りすぎた」と言われている可能性も全然ある。
女子サッカーが「商売」として市民権を得ていく
ただ、それも含めて、女子サッカーが少しずつ商業化され、投資の対象となり、世界のスポーツ市場の中で市民権を得ていっているということなんだと思います。
女子サッカーが「理念が大切な競技」「誰かが支えてあげなければいけない競技」としてだけではなく、
「これから客が増える」
「スポンサーがつく」
「放映権や肖像権に価値が生まれる」
「先に投資すれば儲かるかもしれない」
と思われるところまで来た。
私は、そこが結構面白かったんですよね。
女子サッカーが今後、本当に巨大なエンターテインメントになるのかは分かりません。
WEリーグがいつか全国区の人気を獲得するのかも分かりません。
ただ、これまで社会の端っこに置かれがちだった女子サッカーという文化が、少しずつ広がって、商売としても無視できない存在になっていく。
その過程をリアルタイムで見られている。
今回のニュースは約102億円という金額そのものもエグいのですが、私にとっては、女子サッカーがそういう段階に差しかかっていることを実感できたニュースでした。
ということで今回は、女子サッカーの未来は明るいですばい!という話ではなく、
「なんか本当に盛り上がってきとるんやなあ」
というのを、約102億円の投資案件によって急に実感させられた、という話でした。