シーズン中、スタジアムに行くと、ピッチの上だけではなくスタンドにもいろいろな人がいます。
声を出して応援する人、試合をじっと見ている人、ノートにメモを取る人、スマホで写真を撮る人。そして、カメラを構えている人。
自分もその一人です。ベレーザの試合に行く時は、ほぼ毎回カメラを持っていきます。ただ、ふと思ったんですよね。
同じようにカメラを持っている人たちは、普段何を考えながら写真を撮っているんだろうと。
機材の話や編集の話は、もちろん気になります。ただ、それだけではなくて、どの瞬間に反応しているのか、なぜその写真を残したいのか、撮れた写真や撮れなかった写真に何を感じているのか。そこまで話してみたら、きっと面白いはずです。
ということで今回は、ベレーザやヴェルディの会場で写真を撮り続けている日記さんに声をかけて、Zoomでじっくり話してみました。
日記さんとは会場でお会いすることはありましたが、写真についてちゃんと話したことはあまりありませんでした。noteなどでも写真を大事にされている印象があったので、今回はそのあたりを聞いてみたいと思っていました。
今回は、なるべく対談そのものの空気を残す形でまとめてみます。
今回の座談会参加者
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写真の入り口は、かなり違っていた
まず聞いたのは、そもそもサッカー写真を撮り始めたきっかけです。
自分の場合は、地元のJリーグクラブを見ていた頃から、試合をただ見るだけでは少し物足りなくて、コンデジで少しずつ撮り始めたのが入口でした。背景がボケて、主役が目立つ写真を撮りたいと思って、一眼レフに移行しました。
一方で日記さんは、かなり違う入り方でした。
この時点で、かなり違いが出ていました。
自分はどちらかというと、SNSネイティブ世代として「インターネットに載せるための素材を自分で作る」感覚から写真に入っています。日記さんは、文章と写真をセットで扱う新聞部の活動から入っている。
写真を撮る入口が違うと、写真に求めるものも変わる。このあと話していく中で、その違いがどんどん見えてきました。
日記さんの原点は、雑誌とサッカーカードだった
さらに話を聞いていくと、日記さんの写真観には、子どもの頃に見ていたサッカー雑誌やサッカーカードの影響もありました。
これは、後の写真の選び方にもつながっていました。
日記さんは、自分の好きな写真について「カードにもなるし、雑誌にも使えそうな一枚」という表現を何度かしていました。つまり、ただいい瞬間を撮るだけではなく、そのまま一枚のビジュアルとして成立する写真を求めている。
この「カードっぽさ」「雑誌っぽさ」は、日記さんの写真観を理解する上でかなり大事なキーワードだと思います。
ベストショットに出る、それぞれの基準
続いて、昨季のベストショットを見せてもらいました。
日記さんが最初に見せてくれたのは、ベレーザのゴール前のシーンでした。ゴールに向かって選手が迫り、キーパーをかわす場面。しかも、ゴール裏に近い位置から撮っている写真でした。
この「カメラを放り投げて見ちゃうこともある」というのは、とてもよく分かります。
決定機が目の前に来た時、撮るべきなのに、普通に見たくなる。撮影者としての自分と、観戦者としての自分が一瞬でぶつかる。その中で、最後までファインダーで追えたことが嬉しい。
これは、写真を撮る人ならかなり共感する感覚ではないでしょうか。
日記さんにとって良い写真は「カードにできる写真」
日記さんの写真を見ながら、写真の良し悪しでどこを重視しているのかを聞いてみました。
ここはかなり面白かったです。
自分の場合は、かなり感覚的に「パッと見ていい写真」かどうかを見ています。もちろんピントや表情は見ますが、全身がきちんと入っているか、カードとして成立するか、という発想はそこまで強くありませんでした。
日記さんは、写真の入口が雑誌やカードだったからこそ、今撮っている写真にもその感覚が残っている。写真の原体験が、そのまま撮り方に出るのは、かなり面白い発見でした。
ストーリーを知っているから撮れる写真がある
日記さんが選んだヴェルディの写真では、福田湧矢選手、吉田泰授選手の写真が出てきました。
どちらも、ただ「写りがいい」だけではなく、その選手がそこに至るまでの背景を含めて印象に残っている写真でした。
ここで、写真を撮る上で知識は必要なのか、という話になりました。
この話は、今回の座談会の中でもかなり大きな軸になりました。
同じシャッターを切っていても、その選手をどれくらい見てきたか、そのチームの文脈をどれくらい知っているかで、残る写真は変わる。ピントや構図だけではなく、その写真にどういう時間が乗っているかが大事なのだと思います。
好きだから撮れる写真がある
自分が選んだ写真の話をした時、日記さんからかなり印象的な言葉が出ました。
自分はベレーザの写真を選ぶ時、正直に言うと「いいね数」や「SNSで反応があったか」もかなり意識していました。SNSに載せるために撮っている部分がある、という話もしました。
当日、自分が見せたのは、式田和選手、岩清水梓選手、北村菜々美選手と菅野奏音選手が喜んでいる写真の3つでした。
式田和選手の写真
— マト (@mato_green17) 投稿を見る
岩清水梓選手の写真
— マト (@mato_green17) 投稿を見る
北村菜々美選手と菅野奏音選手が喜んでいる写真
— マト (@mato_green17) 投稿を見る
その流れで、北村選手の写真を見せた時のことです。
これは、とても良い言葉でした。
写真の話をしていると、どうしても機材、設定、編集、ピント、構図の話になります。もちろんそれも大事です。
でも、ずっと見ているから分かる表情がある。好きだから反応できる瞬間がある。好きだから待てるし、好きだから何度も撮れる。そういう写真は、たぶんプロの写真とはまた別の価値があります。
好きだから撮れる写真がある。今回の記事の中心に置くなら、この言葉なのかもしれません。
撮った後にも、その人の写真観が出る
ここからは、撮影した後の話に移っていきました。
写真は、シャッターを切った瞬間だけで終わるものではありません。どの写真を残すのか、どう編集するのか、どこに保存するのか、そして公開する時に何を気にするのか。その一つひとつにも、その人の写真観が出ます。
スマホで編集する理由
続いて、編集・現像の話です。
自分はLightroomに写真を取り込んで、明るさをかなり重視して編集しています。白飛びギリギリまで明るくした、比較的正統派の写真が多いと思っています。
一方で日記さんは、スマホで編集しているとのことでした。
この考え方はかなり納得しました。
写真をSNSに出す以上、多くの人はスマホで見ます。であれば、スマホの画面で見てきれいに見えるかを基準にする。言われてみれば当たり前なのですが、意外と自分はそこまで割り切れていなかったかもしれません。
編集環境にも、その人の考え方が出ます。自分はPCでRAWを開き、細かく明るさを見ながら仕上げていくタイプです。一方で日記さんは、最終的に読者が見るスマホ画面を基準にしている。ここはかなり大きな違いでした。
撮影設定と保存方法にも個性が出る
編集の話から、撮影設定や保存方法の話にも広がりました。
自分は1/1,000、場合によっては1/800くらいで撮ることもあるので、日記さんの「止めたい」感覚はかなり印象的でした。
さらに、保存方法もかなり違いました。
写真の話というと、撮る瞬間や編集の話になりがちですが、保存方法もかなり大事です。
RAWで残し続けるのか、JPEGで軽く回していくのか。スマホで編集するのか、PCで管理するのか。こういう話も、写真を撮っている人同士だとずっと話せてしまいます。
表に出てくる一枚の写真だけを見ると、そこに至るまでの管理方法や保存方法は見えません。でも実際には、写真を続けていく上で、このあたりの運用はかなり重要です。撮る枚数が増えれば増えるほど、写真との付き合い方そのものが問われていくのだと思います。
リヴェルンを撮る時に気をつけること
データ保存の話から、日記さんがかなり撮っているというリヴェルンの話にもなりました。
一試合で1,500枚から2,000枚ほど撮ることもあるという日記さん。そのうち、リヴェルンの写真が2割から3割くらいを占めることもあるそうです。
そこで、リヴェルンを撮る時に一番大事なことを聞いてみると、意外な答えが返ってきました。
これはかなり大事な話でした。
リヴェルンはどの瞬間を切り取ってもかわいい。そこは間違いありません。ただ、そのかわいい瞳に、周囲の人の顔が映り込んでしまうことがある。
写真を公開する時の配慮として、これは覚えておきたいポイントです。
機材よりも、どこから何を見るか
機材の話から、話題はだんだん「どこから撮るか」「何を見て撮るか」に移っていきました。
サッカー写真というと、どうしてもカメラやレンズの性能に目が行きます。もちろん機材は大事です。ただ、日記さんと話していて印象的だったのは、機材そのものよりも、座る場所や選手を見る解像度をかなり大事にしていることでした。
機材よりも、席にお金をかける
機材の話では、日記さんが最近Canon R6 Mark IIに変えたという話になりました。
ただ、話していて意外だったのは、日記さんがそこまで機材そのものに強いこだわりを持っているわけではなかったことです。
これはかなり違いが出たポイントでした。
自分は、明るいレンズが欲しい、背景がもっとボケる写真を撮りたい、トリミング耐性が欲しい、という方向に考えがちです。一方で日記さんは、機材そのものよりも、どこから撮るか、どの席に座るかを重視している。
たしかに、どれだけ良い機材を持っていても、撮れない角度は撮れません。逆に、席が良ければ機材の限界を補えることもある。
何を買うかではなく、どこから見るか。これも、かなり重要な写真論でした。
選手ごとの「象徴的なプレー」を撮る
今回、一番「自分と日記さんでは見ているものが違う」と感じたのは、選手ごとのプレーの見方でした。
日記さんはサッカー経験者でもあり、選手それぞれのプレーの特徴をかなり細かく見ています。
自分は、表情や関係性、SNSで話題になりそうな瞬間を見ていることが多いです。
一方で日記さんは、選手ごとの象徴的なプレーをかなり意識している。どの選手がどういうタッチをするのか、どういう守備をするのか、どういうクロスを上げるのか。そのプレーの特徴を知っているから、カメラを向けるタイミングも変わる。
ここは、写真を撮らない人にも面白い部分だと思います。写真を撮る人は、ただボールを追っているわけではありません。その選手らしい瞬間を待っているのです。
同じ位置に座って、同じ選手を撮っていても、何を「その選手らしい」と思うかで写真は変わります。表情を待つ人もいれば、プレーの形を待つ人もいる。日記さんの場合は、選手ごとの動きや技術の特徴をかなり細かく見ていて、それが写真の狙いにも直結していました。
撮るのが難しい選手もいる
逆に、撮るのが難しい選手の話にもなりました。
自分が名前を挙げたのは、青木夕菜選手です。
撮りやすい選手と、撮るのが難しい選手がいる。
これは、応援されている、されていないという話ではありません。むしろ、うまい選手、完成度が高い選手ほど、こちらがその良さをどう切り取るかを問われることがあります。
「最高のユナ様を撮る」。これは、来季の一つの楽しみになりそうです。
撮れなかった写真と、これから撮りたい写真
ここまで、撮れた写真や撮り方の話をしてきましたが、写真の話で面白いのは、撮れなかった写真にも記憶が残るところです。
うまく撮れた一枚だけではなく、逃した瞬間、準備不足で撮れなかった試合、次こそ撮りたい構図。そういう悔しさや宿題も含めて、写真を撮る楽しさなのだと思います。
撮れなかった写真の話
撮れた写真だけでなく、撮れなかった写真や失敗談も聞きました。
日記さんから出てきたのは、かなりシンプルで、かなり痛い失敗でした。
これからカメラを始める人に向けて、かなり実用的な話です。
スタジアムに着いてから、ボディがない、レンズがない、バッテリーがない、SDカードがないと気づいたら、本当に何も始まりません。
出発前に一枚撮る。これは自分もかなりおすすめです。
これから撮りたい写真
これから撮ってみたい写真の話では、日記さんから「ゴール裏を背にした選手を撮りたい」という話が出ました。
これは、席の話ともつながります。
同じ試合でも、座る場所が違えば、背景も、撮れる写真も、見える感情も変わります。カメラを持つと、スタジアムの席選びそのものが写真の一部になっていくのだと思います。
この話は、さきほどの「席にお金をかける」という話ともつながっています。いい写真は、カメラの性能だけで決まるわけではありません。どの背景を入れたいのか、どの角度から選手を見たいのか。撮りたい写真が具体的になるほど、座る場所の意味も変わっていきます。
これから始める人へ
最後に、これからカメラを始めてみたい人、サッカー写真に興味がある人に向けて、一言もらいました。
これが、今回の締めとしては一番良い言葉かもしれません。
高い機材があれば撮れる写真はあります。明るいレンズがあれば、暗い会場でも撮れる場面は増えます。フルサイズや高画素機には、それぞれの強さがあります。
でも、最初から全部そろえる必要はありません。
中古でもいい。安い機材でもいい。まず撮ってみる。撮ってみて楽しかったら、次を考える。写真はそこから始まります。
おわりに
今回話してみて一番面白かったのは、同じようにベレーザやヴェルディを撮っていても、見ているものが全然違うということでした。
自分は、表情や関係性、SNSで見た時の強さをかなり見ています。パッと見ていい写真かどうか、選手が保存したいと思える写真かどうか、いいねがつくかどうか。そういう基準が自分の中にあります。
一方で日記さんは、雑誌やカードのように一枚で成立する写真、選手のストーリーが乗った写真、その選手らしいプレーが写った写真を大事にしていました。
どちらが正しいという話ではありません。
むしろ、写真を撮る人の数だけ、現地の見え方があるのだと思います。
試合を見ている人、応援している人、文章を書く人、写真を撮る人。その全員が、同じ90分を少しずつ違う角度から見ています。
カメラを持つことで、試合全体は見えにくくなるかもしれません。でもその代わりに、選手の表情、プレーの癖、ゴール裏の熱、好きだからこそ反応できる一瞬が、前よりも深く見えるようになる。
サッカー写真の面白さは、たぶんそこにあります。
日記さん、平日の夜に長い時間ありがとうございました。次はもう一人くらい写真を撮る人を呼んで、また違う写真観も聞いてみたいです。
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