WEリーグにまた足を運びたくなるヒントは「ピッチへの近さ」かもしれない

以前の記事の中で「WEリーグにハマったので長野まで行ってきます」という旨の書き込みをした。

https://note.com/verdy_love/n/na78115023841

そこで先週の週末に、実際に長野に行ってきたので、そこで感じたことや考えたことをここに書き記してみようと思う。

プロローグ

長野は観光に来るには良い場所だ。東京とは明らかに”空気”が違う。新幹線に乗っていればあっという間に到着するところもポイントが高い。

個人的に長野に来るのは2回目だが、ここに来て損をしたと思ったことはない。

東京駅から新幹線で2時間もかからずに到着、天気も良く空気も美味しい

長野に到着して駅周辺をふらふらと歩いていたところ、目にしたのは長野パルセイロレディースの大きなポスターだった(写真を撮っておけばよかった)。面白いのがそこでは長野パルセイロではなく、長野パルセイロレディースの方が大きく取り上げられていた。

あえて男子チーム・女子チームという言い方をするが、駅周辺の他の場所でも男子チームと女子チームのポスターは並んで貼られているか、女子チームのみというケースも何件かあった(これまた写真を撮ってくればよかった)。

これはふらっと歩いただけの偏りのある見え方かもしれないが、それでも女子チームの存在感がこれだけ大きな街は見たことがなかったので驚いた。

スタジアムに向かう

長野駅からスタジアム最寄りの篠ノ井駅までは200円、所要時間は15分程度だった

さすがに最寄り駅ともなると「がんばれ!パルセイロ」の文字が書かれており、その下のポスターには試合日程などが書かれていた。

長野Uスタジアムまでの最寄りの駅は篠ノ井駅という場所で、30分に1本ペースでシャトルバスが出ている。

シャトルバスに乗り込むと15分程度でスタジアムに到着。急に「ドン」と姿を現すスタジアムがクールだ。外観だけを見るとギラヴァンツ北九州のホームスタジアムのミクニワールドスタジアムに近いなと感じた。

シャトルバスから降りてすぐの光景。すぐそこに当日券のチケット売り場がある。

スタジアムに入るとアウェイゲートが封鎖されており、アウェイスタンドに行こうとするにはホームチームのゴール裏とバックスタンドを通り抜けないといけないらしい。

これはWEリーグの際の運営コストの削減のための施策だろうが、相手チームの応援団の後ろを緑の人が通ろうとするとチラチラと視線を感じた。

バックスタンドの通り道には焼きそばを焼いているスタグル街のようなものもあり、香ばしい匂いで私の食欲をそそる。まずは着席と思いアウェイシートに座ってみた。

着席

「近い…!」

第一の感想は近すぎる。あまりにも近い。そしてスタジアムが綺麗すぎる。それに尽きる。

着席をすると1席ごとにシートにドリンクホルダーと背もたれもつけられており、ホームエリアどころかアウェイエリアにも屋根がある。スタジアムの完成度は羨ましすぎるほどで、長野への永住も真剣に考えるほどだった。

長野駅からも近く、強いて言えばアウェイエリアから大型ビジョンを見られないことを除けば(最後の最後までこのスタジアムにはビジョンがないのかと思っていた)完璧なスタジアムだと言えるが、これ以上スタジアムを褒めちぎっては先に進まない。

長野Uスタジアムの完成度にうっとりとしていると、あっという間に選手が公開ウォーミングアップをする時間になった。

選手たちの挨拶を見届けてから、さっそく選手たちのアップ姿を見た。

近い。あまりにも近すぎる。

私はゴールネットの真裏に近いところで試合を見ていた。

位置的に日テレ東京ヴェルディベレーザの守護神・田中桃子選手の真後ろから選手たちのシュート練習を見ることが出来たので、ゴールキーパーの目線でシュートコースを予測していた。

選手たちのシュートスピードやコースの狙いは間近で見ていると言葉にならないほどの迫力があった。

ストライカーの植木理子選手のシュートはキーパーの手に触れられないところまで伸びてネットに突き刺さる。代表帰りで世界を相手に戦ってきた藤野あおば選手のシュートはとてつもないスピードでネットに突き刺さる。

近くで見るとゴールキーパーの動き(反応の良さ)や、シュートする選手の目線やボールの置き方など、選手たちのキック一つ一つに込められた思いが見えたのがとても興味深かったし、ストライカーと呼ばれる選手たちのシュートはまた一つ段階が違うことが体感で分かった。

味の素スタジアム

ここで一つ話を逸そう。私の応援している東京ヴェルディは味の素スタジアムをホームスタジアムとして試合をしている。

味の素スタジアムは1階席だけではなく2階席まで完備されており、キャパシティは約5万人を誇るスタジアムである。

味の素スタジアムのゴール裏からの景色

その巨大なキャパシティ故に、他のスタジアムには作り出せない圧倒的な非日常感や、試合時には人の熱気や大声援でスタジアムに”うねり”を生じさせることができる。

その反面、巨大なキャパシティ故にピッチとの距離は正直に言って遠い。

私は昨シーズンから味スタに足を運び出したが、新宿からもうひと距離あるし、これだけサッカー専用球技場に溢れた関東圏内でピッチからも遠い。「2つの意味で遠いスタジアムだな」と思ったのが私の印象だった(東京ヴェルディサポーターの方に怒られてしまうかも)。

昨シーズンは10回以上もここに足を運び試合を観戦した訳だが、足を運んだ回数が多くなるほどスタジアムにも愛着が湧いてきた。

なぜ、ここで味の素スタジアムの話をしたのかと言うと、迫力の違いだ。

WEリーグは「男子よりもプレースピードが遅いから面白くない」「パワーやスピードが男子に劣る」と言われがちで、実際に筋肉量などの関係でそれが事実かもしれないと素直に思う場面はある。

ただ、今回の長野Uスタジアムでのウォーミングアップにおいて「女子サッカーには迫力がない」とは全く思わなかった。これがいかに正直な感想であるかを語るために、ここまで怒られそうなことでも素直な言葉を書き連ねてきた。

さて、結論にも行きたいところだが、せっかくなので試合の感想も書かせて欲しい。

試合の感想

試合は結局2-0でベレーザが勝利した。そして、そのゴールの両方がベレーザのゴール側に突き刺したものだった。試合中の選手たちの近さを画像で見て欲しい。

これはコーナーキックでボールが蹴られるのを待っているシーン。

目の前でドリブル勝負を仕掛けて1vs1からコーナーキックを獲得したシーンだが、正直に言うと男子サッカーを10試合以上見てきた私から見ても迫力があった。

また、これは男子と女子、どちらが優れているかという話ではなく、「ピッチサイドから見ると女子サッカーも男子に劣らぬ迫力がある」という話なので混在のないように。

また、アタッキングシチュエーションにおいても、激しくプレスをかけてくる長野パルセイロレディースの選手たちをパスやドリブルを使って丁寧に剥がしていく攻撃が見られた。

相手のマークをドリブルで剥がす宮川麻都選手

ただ、ピッチレベルに近いところで見ていると、パス回しにはかなり苦戦をしていたようにも見えた。パスコースを切られた状態でプレッシングに来る長野に対して、ピンチシーンも作りながら中盤の選手たちの足元のうまさで切り抜けるなど、「おお」と声がでるほど凄いプレーもあった。

また、いつもは岩清水選手が出てくるセンターバックのポジションに、西川選手が起用されていた。

西川選手は、試合序盤に慣れないCBでのプレーにパスの出しどころがなく、かなり焦りの見えるプレーが見られたが、同じくセンターバックに位置取る村松キャプテンが「落ち着こう」というジェスチャーと共に預けどころを作りに行く動きが見られたりなど(実際にそれでパス回しは上手くいっていたように見える)のプレーが見られた。

このような選手たちの心情が見えたのは、このピッチからの近さがあったからだろうし、少し後ろの座席やDAZNでは決して見ることができなかった表情と細かな仕草だっただろう。

まとめ

さて、ここまで好き勝手に書いてきたが締めといこう。

結論として、「WEリーグを見る時はピッチの近くで見ると極めて迫力があり面白いサッカーを見ることができる」ということが伝えたかった。

「WEリーグをピッチの近くで見ると、JリーグやBリーグなんかよりも面白い」なんてことではなく、言葉としては、それに匹敵する試合を見ることができるという程度に抑えておこう。

私なりの分析ではあるが、サッカースタジアムに来ている人たちはなかなか俯瞰してサッカーを戦術的に、ロジカルに観ている訳ではないからだと考えている。

それはそれでサッカー文化の未熟さという問題はあると思うが、マクロな楽しみ方が難しいのであれば、ミクロなアプローチの方が人の心を動かしやすいからだと考察している。

さて、この言葉をどう解釈するかは自由だ。

例えば、この記事を読んだあなたが、次にWEリーグの試合を観に行く時に、いつも観ている座席の5つ前に座るのもありだろう。

例えば、NACK5・ユアスタ・フクアリ・埼スタ・西が丘・長野U・ノエスタなどのサッカー専用球技場で行われるWEリーグの試合を観に行くのもありだろう。

例えば、これを読んでいるのがどこかのサッカークラブのスタッフだとしたら、少し話は違ってくる。

ピッチに近いところや、ピッチレベルで試合を見ることが、「観る側」にとっての特等席だとしたら、誰を座らせるべきかを考えなければいけないと思う。

それは長い期間チームを愛して支えてくれているサポーターであったり、これからの将来を担う人材になるであろう近隣の小中学生たちであったり、選択肢はいくつか考えられると思う。

それはチームの戦略によっても変わってくるだろうが、「10年後・20年後に女子サッカーがより広く普及しているために」と言う視点が少しでも含まれているといいなと思うばかりである。

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